理想の国の姿とはどのようなものでしょうか。
国民みんなが幸せに生きられる国でしょうか?
どんな国にも負けない経済力を持つ国でしょうか?
それとも、おいしい食べ物があって安全に過ごせる国でしょうか?
今回のわたしの主張は以下になります。
『世界中のすべての人は、一切働かなかったとしても生きていける程度のお金を無償でもらえなければならない』
俗に言うベーシック・インカムですね。
国が果たす役割は以下のようなものがあります。
- 外の国が攻撃してきても国民を守る役割
- 悪い国民がいたらやっつける役割
- 国内の理不尽な格差を埋める役割
それに加え 『すべての国民に、生きていくのに必要な最低限のお金を無条件に与える役割』 も果たさなければならない、というのが今回の主張になります。
(国がすべての国民に毎月10万円支給する、というようなイメージ)
もしこの『みんなお金もらえる制度』が実現されれば、この世界はまったく違った景色を見せるでしょう。
一円も稼がなくても生きていける、ただそれだけでは決してありません。
お金を稼げないからと、ミュージシャンになる道を諦めなくて済むのです。
自分にはこの仕事しかないと、過酷な労働環境で過労死に追い込まれる人がいなくなるのです。
貧乏な家庭の子どもでも、お金の心配をすることなく安心して勉強に打ち込めるのです。
大切な我が子を自分の手で育てる、そんな当たり前のことが簡単に実現できるのです。
そこでは、やりたくもない仕事をして貴重な時間を浪費する人間は誰もいません。
すべての人が、自分の本当にやりたいことを実現できます。
働かなくてもいい、たったそれだけの選択肢があるだけで、人はかけがえのない自由を手に入れられるのです。
そんなことが実現できるの?
できます。
まず、『みんなお金もらえる制度』が実現されれば生活保護や年金などの社会保障制度は必要なくなります。
たとえば今の日本では社会保障で年間100兆円を給付していますが、そのうちの医療費30兆円を引いた残りの70兆円が丸々浮くことになります。
これだけで一人あたり月額5万円の『みんなお金もらえる制度』が実現できることになります。
(実際には、お金持ちには『みんなお金もらえる制度』で給付される月額5万円程度にあたる増税をなんらかの形で負担してもらえればさらに支給額を増やすことができます)
エコノミスト誌の試算 (Universal basic income in the OECD) によると、上記の社会保障制度を『みんなお金もらえる制度』に置き換えてそれ以外の政府支出と税収を変えなかった場合、なんと西欧の 7カ国では一人年間 1万ドルを超える給付が可能になることが分かっています。
(生活保護などの制度は給付対象者の審査などにかなりのコストがかかりますが、『みんなお金もらえる制度』はみんなに毎月同額を支給するというシンプルな制度なのでコストがほとんどかかりません)
『みんなお金もらえる制度』は十分に実現可能なのです。
働かないひとはお金をもらえなくて当然なのでは? ①
よく考えてみましょう。
私たちが得ている富は、現在の私たちの労働だけから生まれているわけではありません。
過去の世代の発明やシステム、制度によって多くの富が今も生まれています。
しかし今、その富は一部の人たちが独占しています。
大金持ちの子どもは一生働かなくても生きていくことができます。
貧乏人の子どもは働かないとお金がなくて死にます。
これは本当に社会のあるべき姿なのでしょうか。
人類が何年もかけて作り上げた富を生むシステムを、なぜ一部の人が独占できるのでしょうか?
特権階級に属しているから?
親が資産家だから?
その人に商売の才能があったから?
私は、どんな理由をつけたとしてもそんなことは正当化されないと考えます。
今を生きる私たち全員が、その恩恵を受けてもいいはずではないでしょうか。
働かないひとはお金をもらえなくて当然なのでは? ②
さらに別の面からも考えてみましょう。
現代ではお金をもらえない多くの仕事が存在しています。
街のゴミを拾っても、誰からも一円ももらえません。
自分の子どもを育てても、誰からも一円ももらえません。
一生懸命勉強しても、誰からも一円ももらえません。
ですが、これらは何の価値もない活動なのでしょうか?
違いますよね。
むしろ、お金を稼げなくても社会にとって極めて重要な活動がそこにあることに気づくはずです。
(その中には、長期的に見ればはるかに多くのお金を生み出しうる活動も数多くあります。勉強や起業などはその一例でしょう)
お金は稼げないけれどとっても大事なこと、『みんなお金もらえる制度』はそういった活動の後押しをしてくれるのです。
そんなことをしたら、誰も働かなくなって国が破滅するのでは?
頭のいいあなたはもしかしたら、『みんなお金もらえる制度』があるなら誰も苦労して働かなくなるのでは? と思うかもしれません。
ですがよく考えてみてください。
あなたは「生きるためのお金を稼ぐ」、ただそれだけのために働いていますか?
欲しいものがあってそれを買うために働いたり、生活の水準を今よりももっと高めようと働いたりしていませんか?
私はむしろ、『みんなお金もらえる制度』は人の労働意欲を高めるであろうと考えています。
(現行の生活保護制度は、収入が増えるとお金がもらえなくなるため生活保護受給者はますます働かなくなるという面がありますが、『みんなお金もらえる制度』はその人の収入にかかわらずお金をもらえるのでそのような逆効果は生まれません)
中には誰もやりたがらない仕事もあるでしょう。
ですが、そういった仕事は「そんなにお金がもらえるなら、しょうがないからやってやるか」という人が出てくる正当な水準まで報酬がつり上がっていくと考えられます。
日々の生活に四苦八苦している仕事を選べない人を利用し、安い賃金でキツイ仕事をさせる現代、おかしいのはどう考えてもこっちです。
そもそも、『みんなお金もらえる制度』で人が働かなくなるのであれば世界中のお金持ちは誰も働いていないはずです。
だって彼らは働かなくても何の心配もなく生きられるのですから。
実業家の孫正義さんを見てください。
彼は一生遊んで暮らせるお金がありながらあれほど仕事に打ち込んでいます。
彼に限らず、まわりを見渡せばお金に困ることのない多くの人が労働していることに気づくはずです。
さらにいえば、私たちはすでにお金をもらえない多くの仕事(家事や育児、お年寄りの世話等) をしています。
人は「生きるためのお金を稼ぐ」ために働いているわけではないのです。
何もしなくてもお金が手に入る世界、そんな世界は日々生きるためにあくせく働いている私たちにとっては想像することすら難しい世界かもしれません。
私たちが植え付けられている常識とはあまりに異なっているため、もしかしたら嫌悪感すら抱く方もいるかもしれません。
ですがいつか、「昔はお金なんかのために、本当に自分がやりたいこともできない世の中だったんだよ」なんて子どもに話すときが訪れるのではと、私は期待しています。
参考文献
- 山森亮 (2010) 『ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える』 光文社新書
- ガイ・スタンディング (2018) 『ベーシック・インカムへの道』 プレシデント社
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