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Fully Hatter の宗教観

〜哲学的・宗教的な問いに科学の力で答えを出す試み〜
コメント 2

『Fully Hatter さんは何か宗教を信じていたりするのでしょうか?』

という質問を受けましたので、こちらで回答を試みてみます。

まず、そもそも宗教とは何でしょうか?

日本人の多くは、キリスト教や仏教といった宗教を特に何も信じていない人が多いですね。

ただ、わたしは すべての人間は宗教を信じている と考えています。

そして、宗教とは このよく分からない世界でとりあえずの一歩を踏み出すこと だと思っています。

たとえば、あなたはビジネスマンだったとします。そして上司から「この資料を作ってくれ」と頼まれたとします。

あなたはどうしますか?

おそらく、その資料を作るでしょう。でも、なぜあなたはその資料を作るのでしょうか?

それは、あなたが何かを信じているからです。

あなたは、その資料を作ることがあなたの仕事だと信じています。実際には、あなたはそんな資料を作るために生まれてきた訳ではありません。

あなたは、上司が自分に指示を出す存在だと信じています。実際には、あなたと上司はただの 2人の人間で、そこには本来は何の関係もありません。

あなたは、あなたが所属しているとされる「会社」というものを信じてます。実際には、そんなものはこの世のどこにも存在しません。

人が行動するとき、そこには何かしらの信念があったりします。

言葉を変えれば、何かしらの信念がなければ人は何をしていいのか分かりません。

あなたが行動するためのとりあえずの指針、それこそが宗教といえるのではないでしょうか?

Fully Hatter の信じるものについて

キリスト教の新約聖書が 480ページもあるように、信じるもののすべてを記すのはかなり大変な作業です。

ですのでここでは、わたしの主要な信念について以下に Q&A 形式でまとめてみようと思います。ちなみにこれらは、わたしの現時点での暫定的な見解です。

Q1: 宗教とは何ですか?

  • その人の行動指針です
  • それを信じることが今を生きるための活力になる信念が「宗教」です
  • 宗教は常にアップデートされ続けなければなりません
    • この世界では正しいことが何も分からないので、自身の宗教が誤っている可能性も非常に高いからです

Q2: なぜ生きるのですか?

この宇宙には「死んだら負け」というルールがあるからです。(いま生きている生き物は今まで生き残ってきた種のみ、ということです)

この宇宙の外側に「死んだほうが勝ち」という他の宇宙があれば、生き物は率先して死のうとするでしょう。(その場合は「死に物」ですね)

それ以外にも、この宇宙には

  • 質量を持つもの同士は「重力」で引き合う (地球の重力に引っぱられているため、みんなは地球の上に立つことができます)
  • 重いものを動かす (動きを変える) には力が必要

といったルールもあります。

※ 物理学を知らない方向けにあえて昔の物理学 (ニュートン力学の世界観) で説明していますが、最新の物理学の知見から言えば上記は不正確ですのでその点だけご注意ください (興味のある方は、相対性理論や量子力学、素粒子論の入門書を読んでみるとおもしろいと思います)

あなたが重力に逆らえないように、「死んだら負け」というルールにももちろん逆らえません。

生きる目的については 『Q6: 人間とは何ですか?』 をご参照。

Q3: 生きることは無意味ですか?

そんなことはありません。

なぜならば、生きることが無意味だと信じることは 『Q1: 宗教とは何ですか?』 の指針と矛盾するからです。(生きることが無意味な方が生きる活力となるような方は、もちろんそのように信じて構いません)

あとは、生きるのが辛すぎて死にたい方は、個人的には死を選んでよいと考えます。(どんな信念も生きるための活力にならないような状況のお話ですね)

拷問は、相手の死の選択肢を奪うことからはじまります。自殺の禁止こそが、人類が考えうる最大の拷問とも言えるでしょう。

ちなみに、正しいことが何も分からないこの世界では、「生きることには意味がある教」も「生きることには意味がない教」もどちらも成立しえます。

その現実において、重要なのは、自分が生きる上でどちらの宗教の方が都合がよいかを考えることではないでしょうか?

また、自由意志の観点からも、生きることには意味がある (人間には未来を切り拓く力がある) と信じています。

詳細は 『「自由意志」なんて存在しないと思うあなたへ』 をご参照。

Q4: 苦しみは必要ですか?

必要です。

人は、喜びと苦しみという指針によって行動を決定するからです。

食事に喜びがなければ、人は食事をせずに餓死をして死ぬでしょう。

ライオンに噛まれることが苦しみでなければ、人はライオンから逃げることもなくただ食い殺されて絶滅していくでしょう。

詳細は 『「幸せ」の定義を科学しよう』 をご参照。

Q5: どうしたら幸せになれますか?

良好な人間関係を築きましょう。

ハーバード大学の研究 で、人生の幸福に最も影響があるのは人との良好な関係であることが分かっています。

詳細は 『人生で失敗する方法』 をご参照。

Q6: 人間とは何ですか?

人間は (象やシャチやライオンと同じように) 生き物である、と考えます。

現代人はこれを当たり前だと思うかもしれませんが、昔の人は「人間は他の生き物より高等な別種族」だと考えていました。

ただし、わたしはすべての生き物が同等だとは思っていません。

人間は 37兆個の細胞で構成されているので、細胞という生き物よりも人間というより大きな生き物の方が高等な生き物だと考えます。

また、細胞の集合体である人間が生き物であるように、それ自体で意志を持つように振る舞う「生き物の集合体」も (当然ながら) 生き物だと考えます。(たとえば、ハチの群れはその群れ全体が一つの生き物のように動き判断することが分かっています)

「細胞」も「人間」も「ハチ」も「ハチの群れ」も「人間という種」も「地球の生態系」も、そのすべては生き物です。

そして、細胞よりも人間の方が高等であるように、人間よりも「人間という種」の方が、「人間という種」よりも「地球の生態系」の方がより高等な生き物です。

わたしの右腕の細胞が人間の一部であることを自覚していないように、人間が「人間という種」の一部であると自覚できないのは自然なことだと言えるでしょう。

あなたが生きる意味は、あなたを構成要素とするより上位の生き物 (「人間という種」や「地球の生態系」) によって決定されます。

あなたの右腕の細胞は、あなたの右腕を働かせるために生きている、といった具合ですね。

Q7: 意識とは何ですか?

あなたを構成するほんの一部の要素です。

あなたの意思決定の 97% は無意識的に行われています。(たとえばあなたは、歩くときに大腿四頭筋を緊張・弛緩させることを意識していないでしょう)

そして、意識は 「エピソード記憶」 をするための機能です。

「エピソード記憶」とは、たとえば自分が朝起きてから夜寝るまで何をしたか、のような、エピソードの連続として順番に覚えていく記憶のことを指します。

もし「エピソード記憶」ができないと、たとえば我々は倉に保管してある食料の存在を記憶することができません。

下等な哺乳類はまさにそのような状態で、お腹が空くと食事をし、余った食べ物のことはその場で忘れてしまいます。まさに認知症のような状態ですね。

カブトムシのような昆虫は「意味記憶」すら持たないため、常に状況に対する反射で生きているといえます。(意味記憶: たとえば辞書のように、時系列には関係のないモノやコトの記憶のこと)

そして、この「エピソード記憶」をするために必要なものが意識です。

逆に言うと、「エピソード記憶」が不要ならば意識も不要です。

自分が行ったことを片っ端から忘れてしまうカブトムシにとって、その行為をまったく意識しなくても何も問題は起こりません。

たとえそれを意識していたとしても、次の瞬間には意識をしていたことすら忘れてしまうので、その意識はまったくの無意味だからです。

Q8: 自分の幸せと他人の幸せはどちらの方が重要ですか?

幸せの量によります。

「自分の幸せを 1 増やす」
「他人の幸せを 10 増やす」

という 2つの選択肢がある場合は「他人の幸せを 10 増やす」を選ぶべきです。(自分自身が生きる上で必要な幸せは十分に手にしている前提です)

太郎くんと花子さんがいた場合、2人とも「自分の幸せを 1 増やす」を選ぶと太郎くんも花子さんも幸せは 1 しかゲットできません。

ただし、2人ともお互いに「他人の幸せを 10 増やす」を選ぶと太郎くんも花子さんも幸せを 10 ゲットできます。

こういった考え方は 功利主義 と呼んだりします。

Q9: お金やビジネスについてはどう考えますか?

お金やビジネスは道具です。

それが悪いものに見えるのは、それを使うのが下手だからです。道具は正しく使えば豊かさをもたらします。

それが素晴らしいものに見えるのは、その危険性に気づいていないからです。道具は使い方を間違えれば不幸を呼びます。

Q10: この世界はなぜ存在するのですか?

138億年前に ビッグバン が起こったからです。

138億年前、地球や太陽を含む銀河系はもちろん、銀河系の他のあらゆるすべての銀河、銀河団、超銀河団のすべてが超微小の 1点 (10^-34cm) に超々高密度の状態で存在していました。

我々の宇宙の外側にいる神様か何かが、その超小さくて超キツキツな点をハンマーか何かでぶっ叩いたのでビッグバンが生じたと考えられます。

何で神様がそんなことをしたのかは知る由もありませんが、おそらくは、何かとっても重要な実験をしているのだと思います。

神様が何となくビッグバンを起こしていたり、意味もなくビッグバンが起きた可能性は一旦は考えなくてよいでしょう。

もしそうであれば、いま自分が生きる意味にも疑問が出てきてしまいますし、そもそも、人類がビッグバンの起源にたどり着くにはまだまだ時間がかかるからです。

現時点で誰も分かっていないし、すぐには正解の出なさそうな問いについては、自分がハッピーになりそうな答えを能動的に選択するのが重要だと思っています。

宗教とはそういうものです。

Q11: この世界はなぜ数学で記述されているのですか?

数学は非常に美しいです。
また、この世界も非常に美しいです。

これ以上の説明は必要でしょうか?

おまけ

おまけ1: 神さまはいますか?

分かりません。いつか人類に神さまがいるかどうか分かる日が来るかどうかも分かりません。

ただ、この宇宙の究極の美と完璧な調和を見るに、なんとなく、これは神さまのような存在が作ったと考える方がいろいろと辻褄が合いそうな気はします。

おまけ2: どう生きるべきですか?

『Q6: 人間とは何ですか?』 でも示した通り、人間は地球の生態系の一部です。

その現実において、あなたが生きる道は以下の 2つのどちらかです。

① 「人間という種」や「地球の生態系」に想いを馳せて生きる
自分よりも上位の存在を感じ、そのために身を捧げるような生き方がこちらになります。

その対象は必ずしも種や生態系である必要はなく、尊敬できる人にあなたの身を捧げてもよいと思います。

② 「人間という種」や「地球の生態系」に想いを馳せずに生きる
生態系もバカではないので、あなたが意識せずともちゃんとあなたが機能するようにあなたをプログラムしてくれています。

たとえば、どうしてもやりたいことや自分の使命に感じること、もしくは、ついついハマってしまうことやどうしてもやらざるをえないことなど、目の前の今を全力で生きることが大事だと思います。

おまけ3: 何を食べるべきですか?

非常に難しい問題です。

まず、栄養学的な観点からは、「〇〇 を食べるべき」という主張は すべて 誤りです。

なぜならば、年齢・性別・筋肉量・運動強度・遺伝的要素・腸内環境 (腸内細菌の種類と量) によって、その人の食べるべきものはまったく異なるからです。

そしてさらに、現代日本に流布している栄養学は嘘の塊です。

たとえば、1日2〜3杯以上の白米を食べると糖尿病になるリスクが上がることは数多くの研究で指摘されていますが、日本の栄養学のベースとなる 「食事バランスガイド (厚生労働省と農林水産省が共同作成)」 にそれが記載されることはありません。

農林水産省は農家を保護する立場にあるため、自国の白米の生産に影響が出るような指針を発表することはできないからです。

ただでさえ栄養学的な答えにたどり着くのは困難を極めるのにも関わらず、参考にすべき文献それ自体にもノイズが多すぎます。

ただし、だからといって安易に「農家の既得権のために市民の健康が脅かされている」と結論づけるのは誤りです。

市民の健康的な食事を優先するあまり、国内の産業が衰退して国力が低下していき、結果として国際的な競争力や発言力が失われてしまったら元も子もないからです。

おまけ4: お葬式はどうすべきですか?

お墓のような物理的なスペースを故人のために確保する必要はありません。

なぜならば、もし人類が今後も存続していけば、そのうちいつかは地表がお墓でいっぱいになってしまうからです。

また、『Q6: 人間とは何ですか?』 でも示した通り、人間は地球の生態系の一部です。

エネルギーや物質の循環が生態系を維持する上での基本中の基本なので、死者を物理的な形で留めておくことは理に反しています。

おまけ5: 哲学のお話が出てこないのはなぜですか?

宗教 (自分がどう生きるかの指針) を考える上では、哲学は一切不要と考えるからです。

哲学とは

  • なぜこの世界は存在するのか?
  • 時間とは何か? (なぜ過去から未来へ一方通行なのか? 時間が過ぎるとはどういうことか?)
  • わたしの見ている世界とあなたが見ている世界は同じなのか?

のような問いを考えることです。

そして、このような哲学的な思索の最終的な結論は、基本的にはすべて「何も分からない」です。

これは、分かったふりをしている人に対しては非常に有効な知見です。

なぜならば、人間が理解できたと思っているようなことはほぼすべて気のせいで、分かったような気がしていても突き詰めてみると結局は何も分かっていない現実に行き当たるからです。

しかし、「何も分からない」では話が進まないので、このように宗教を作る必要があります。

宗教とは、この世界が「何も分からない」ことを前提に、目の前の一歩を踏み出すためのとりあえずの方針です。

方針の正しさを証明できるのであれば、それはもはや宗教ではありません。(その場合は「とりあえずの方針」ではなく「絶対的なルール」となります)

正しいことが何も分からないこの世界。誤ることを恐れず、よりよい方針を探し求めるその姿勢こそが重要なのではないでしょうか?


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キング牧師
最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である。



Comments

1. バード さん
[2022/09/09 13:40:49 JST(UTC+09:00)]

共同体としての会社はあるし、そこが現実に自分を再生産するエネルギーを手に入れる価値を産み出すものなら会社というものはなかったとしてもそういうシステムがあるのは疑いようが無いのでは?
人間が新しい価値を産み出す労働力は幻想ではなく現実にあるものでしょう?
そのための生産現場としての会社を幻想と思うことはできませんし、上司から言われたとしてそれが富を産み出すのは多くの人が理解できると思うのですが?(搾取云々はおいておいて)

2. Fully Hatter さん
[2022/09/09 17:54:08 JST(UTC+09:00)]

> バードさん
上記文章の

『あなたは、あなたが所属しているとされる「会社」というものを信じてます。実際には、そんなものはこの世のどこにも存在しません』

のことですね。
これをより正確に表現するならば

「会社は我々の頭の中にしか存在しないが、それをみんなが信じることで価値が生まれる」

というかと思います。
これは会社に限らず、宗教や国やお金についてもそうですね。

会社が幻想というのは、たとえばいまこの瞬間に全人類の記憶が失われたならば、そこにはもう会社は存在しない、という意味です。(カブトムシや重力は記憶が失われても存在し続けるので実在します)

幻想は力を持ちます。

約1万年前に我々ホモ・サピエンスがホモ・ソロエンシスやホモ・デニソワ、ネアンデルタール人やホモ・フローレシエンシスなどの他の人類種をことごとく駆逐し、現存する人類種を我々ホモ・サピエンスただ 1種のみとすることに成功できたのは、まさにその幻想のおかげです。

ネアンデルタール人やチンパンジーは、実際に行動を共にしている本当の仲間のみを味方と判断するため、その集団は数十人規模がせいぜいです。
一方で、我々ホモ・サピエンスは幻想という魔法により、顔も見たことのない仲間と協力できるので、その集団の人数は百を軽く超えます。
一度も会話をしたことのない他人が自分の仲間かどうか分かるはずがないのに、それを仲間だと信じることでそこに巨大な力が生まれます。

実在するから価値を生むのではなく、幻想だからこそ価値を生むのです。
我々の実在する価値 (たとえば肉体的な強さ等) なんて、チンパンジーにすら軽く劣ります。

<参考文献>
・ユヴァル・ノア・ハラリ (2016) 『サピエンス全史(上) 文明の構造と人類の幸福』 河出書房新社
・ユヴァル・ノア・ハラリ (2016) 『サピエンス全史(下) 文明の構造と人類の幸福』 河出書房新社

どなたでもご自由に書き込んでください。
Fully Hatter が愛をもってご返事いたします。


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